こちらはスキップビートの二次創作ブログです。 原作者様及び出版社様等とは全く関係がございません。

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8-2




***


トントントン――――

キッチンに響くリズミカルな音。
まな板からコロリと転がった胡瓜をつまんで口に放る。
口の中に広がるほのかな酸味、みずみずしい歯ごたえ。
うん。
だるまやから分けてもらった糠床で漬けたお漬物はやっぱり美味しい。
もう1個、とお皿に盛った人参にも手を伸ばし、ポリポリと小気味よい音を立てて齧った。


皮をパリっと香ばしく焼いたお魚と根野菜の煮物をお皿に盛りつける。
出汁の効いたお味噌汁と炊きたてのご飯。

それはいつもと同じ、穏やかな朝の景色。


「おはよう、最上さん」
「おはようございます!」



おうちに帰ろう~Sweet home~



「敦賀さんって器用ですよね」

ボソっとつぶやいたヒトコトに、敦賀さんは卵焼きをつまんだ箸を止め、「ん?」と首を傾げた。

「卵焼き。この間教えたばかりなのにもうこんなに上手く焼けちゃうんだもん」

俺に作らせてと、ボウルを取り上げた敦賀さんが片手で器用に卵を割り、出汁に醤油、砂糖を加えて混ぜ合わせる。コンロの火加減を調節しながら、ぷるぷるした卵を菜箸で器用に丸めて、また卵液を流し入れて……

手元に注いでいた視線を、気づかれないようにそっと移す。
黒いショート丈のギャルソン風エプロン姿で手際良く料理をする姿。それは宛らカリスマシェフのようで。なんとも言えず様になっている。
最初は小さなカラが入っちゃったり、力を入れすぎて黄身がつぶれてしまったりしていたのに。

「先生の教え方がうまいからかな?」

ちょっと拗ねたように口を尖らせた私に気づいた敦賀さんが笑みを浮かべながら黄金色の卵焼きののったお皿を差し出した。

「お師匠、お味はいかがですか?」

目の前に差し出されたふわふわ柔らかい卵焼きをパクリと頬張る。ほんのりした甘さと出汁の旨みが口に広がって知らず笑顔が零れた。

「美味しい。最上検定卵焼き部門の免許皆伝ですね」
「最上さんのお墨付きなんて嬉しいね。でもオムレツは上手くできないんだよな……」

フライパンを前後に振る仕草をしながらう~んと首をひねる。敦賀さんが何度か作ってくれたオムレツは、周りが固くなってしまったり中が生だったりすることもあった。
たぶん、ふわふわのとろとろにしようと意気込みすぎた結果なのだと思う。

そういえば敦賀さんが始めて料理を作ってくれたの、卵料理だったな。
破壊力抜群だった‘マウイオムライス’を思い出し、遠くを見つめる。
あれは本当に、…………すごかった…………

「練習あるのみですよ」

納得できないようにエアフライパンでオムレツを作る敦賀さんにそう告げながら、今日の夕食はオムライスにしよう。と頭の中でメニューを考えた。





――――ピンポンピンポンピンポンピンポーン



「いいよ、最上さん。俺が出るから」

けたたましい音で来客を告げるインターフォンに、立ち上がろうとした私を制し敦賀さんが玄関へと向かう。少し警戒した様子なのはおそらく鳴り響くソレがエントランスロビーからのものではないから。
少し躊躇しつつも後を追う。
この家の来客は社さんのみで他には誰も訪れたことがない。そして社さんは必ずエントランスから訪問を告げる。
セキュリティのしっかりとしたマンションだからファンやマスコミが、ってことはないと思うけど。

「誰でしょう……?」

胸をよぎる悪い予感。
無意識に敦賀さんの服を掴み、背後からドアホンのモニターを覗いた。
そこに映し出されたのは――――

「社さんだ…………」

「珍しいですね、社さんが直接上がってくるなんて」
「今日は事務所で待ち合わせのはずなんだけど……時間も早いし、急な仕事でも入ったのかな?」

ドアを開いた途端、ものすごい形相の社さんが飛び込んできた。

「蓮っ! キョーコちゃんも!! よかった……まだ登校してなかったんだね。二人とも携帯にでないから心配したよ」

「あ、すみません。寝室に置いたままでした。急な予定変更ですか?」
「私も……鞄にいれっぱなしで…………」

「いいんだ。いや! 良くないけどっ。 それよりキョーコちゃん、今日は学校休んでくれる?」
「へっ?」

「蓮も! 少し早いけど今から一緒に事務所に行くから急いで支度してくれ」

いつもと違う切羽詰まった様子の社さんに、私と敦賀さんは顔を見合わせた。


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2012.06.24 / Top↑
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