こちらはスキップビートの二次創作ブログです。 原作者様及び出版社様等とは全く関係がございません。

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冬の海水は、刺すような冷たさで。
水を吸った服の重みで身体の自由を奪われ、上手く泳ぐことが出来ない。

意識を手放した彼女が海水を飲まないよう、しっかりと口を手で押さえ水面を目指した。


Act.the last


海上で待機していたダイバーに船上へと引き上げられていく彼女を見届け、自身も船に乗り込む。

「キ…、最上さん?しっかり!」

触れた頬の冷たさにゾクリとした。覚醒を促すようにペチペチと軽く頬を叩き、何度も声をかける。

それでもその瞳は開かれない。
指先から伝わる、弱々しい脈拍。

呼吸はしている、大丈夫…。
自身に言い聞かせ、渡された毛布で彼女の体を包み抱きかかえた。

プレジャーボートが白いしぶきをあげ、一直線に港湾を目指す。



「蓮!キョーコちゃん!無事か?」
「俺は大丈夫です。でも彼女が…、水は飲んでないと思うんですが………」

予期せぬ出来事に、現場は騒然としていた。
海上の撮影クルーから連絡を受けていたらしく、そこにはすでに赤い光を放つ救急車が到着していた。
ストレッチャーに彼女を乗せた瞬間、足の力が抜けてカクンと地面に膝をついた。

「蓮、お前は体を温めて少し休め。病院へは俺がついていくから!」
「いやです!俺が───!!」

「ダメだ!冬の海に落ちたんだぞ!濡れた服のままじゃ体温が急激に奪われる!お前になにかあったらキョーコちゃんが気にするだろう?!」
「───っ───」

「でも…、心配なんです…。行かせてください…」
「蓮、お前………」

「わかった。そのかわり向こうに着いたら服を借りて体を温めろよ。俺は二人の着替えを持って病院に向かうから」
「ありがとうございます。お願いします」


***


ベッドに横たわる彼女。
顔色は血の気を失ったように白い。

病院での処置で体温もすぐに上昇し、検査でも特に異常はみられなかった。
だけど、彼女の意識は未だ戻らない。

いつかの逆だ。

祈るように瞳を閉じ、握った手をそっと持ち上げて額に当てる。

キョーコの事だけを忘れてしまった俺。彼女はどんな気持ちでそんな俺を見ていたのだろうか……。


もし、自分だったらどうする?
眼を覚ました時、彼女が俺を覚えていなかったら───?
俺の存在を否定されたら───?
「あなたを忘れたかった」と言われたら───?


「ごめん───。キョーコ………」


それでも、俺は───。君を離さない。




「……ん……」
「キョーコ!!」

「…………」

ボーと不思議そうな顔をして俺を見つめる彼女。
俺がわからないのでは……、と不安に駆られ、繋いだ手に力がこもる。

「───あっ!敦賀さん!! 怪我は?怪我はないですか?」

勢いよく起き上がったせいでグラリと眩暈をおこした彼女を支え、そのまま胸に抱き寄せた。

───自分の事よりも俺を心配するなんて。

崖の残された俺に向けた、あの笑顔。
あの時、彼女が腕を引っ込めたのは、おそらく俺が再び記憶を失くしてしまう事への恐怖なのだろう。


「俺は大丈夫。それよりキョーコは?どこか痛いところはない?」
「ん───、大丈夫です。って!また呼び方間違えていますよ!」

思わず苦笑い。
まったく君はこんな時まで。

「間違えてないよ?君は、誕生日に俺のお嫁さんになるキョーコ、だろ?」

いつかのように、そっと左手の薬指に唇を落とす。

「え……?」

出来れば記憶が戻った時にもう一度プロポーズを。
そう思ってずっと持ち歩いていたエンゲージリング。

社さんが着替えと一緒に持って来てくれたそのリングを、そっと彼女の指にはめた。

「思い出したんですか………?」


「ごめん」
「……どうして謝るの?」

「俺は、君を───」
「でも、好きって言ってくれた。私の事、覚えていないのに。そのまま離れていったっておかしくないのに…」

「でも……、君を傷つけた」
「うん、傷ついた。すごく、すごく悲しかった」

「だから…。1つだけ、我儘聞いて?」
「ん?」


「もう、一人にしないで───?」


大きな瞳がみるみる潤んで、ぽろり、大粒の涙が零れる。
まるで真珠の様な涙をそっと指で受け止めた。

どちらからともなく重ねた唇。
抱きしめあう二人。



「離さない───。永遠に……」



永遠のその先まで、ずっと───。

                         Fin.




拙い文章にお付き合い頂きましてありがとうございました。

皆様のポチやあたたかいコメントに支えられ、無事完結することができました。

付き合っている二人の妄想が好きな私。
今後も時々、このお話の設定でラブ甘な二人を書いていけたらいいなと思っています。
宜しければ、お付き合いください。

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2010.06.07 / Top↑
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