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それは誰のため? 6
キョーコ

オフの日に、誘われるままに、敦賀さんが出ているドラマの撮影現場に見学に来た。

社さんも敦賀さんも、それぞれの用事で席を外すと、ため息がこぼれ落ちた。

別に、見学が退屈だとか、敦賀さんと社さんが鬱陶しいとかいう理由ではない。

敦賀さんの演技は、いつ見てもすごく勉強になるから見学の機会は逃したくないと思うし、社さんや敦賀さんと一緒にいるのはすごく心地よくて、傍にいられることは嬉しい。

それでもため息が出るのは、敦賀さんの『お父さん』と私の『娘』の差がありありと見えて、落ち込んでしまったからだ。

撮影現場に着いた時、敦賀さんは満面の笑みで私を出迎えてくれて、その顔は正しく愛しい娘に向けるであろう『お父さん』そのもので、対する私は、いつもの後輩のままだった。

『娘』として『お父さん』の仕事場を見学するという設定だったのに、敦賀さんのドラマの共演者の方や、スタッフの方の手前、『娘』になるのを躊躇してしまった。

そんな私に敦賀さんはさりげなく助け船を出してくれた。

「キョーコ?外で『お父さん』って呼びにくかったら、名前で呼んでくれてもいいんだよ?仲がいい親子なら当たり前のことだし」

いつかTVで見た仲良し母娘が名前で呼び合ってたけど、父と娘でもそういうことがあるのかしら?

せっかく出してくれた助け舟だったけど、やっぱり名前で呼ぶのも躊躇われた。

「『敦賀さん』なんて後輩みたいな呼び方禁止ね。今、俺は『お父さん』なんだから」

ホントにいつでも『お父さん』になりきってる敦賀さんを、尊敬してしまう。

それに比べて私は……

思い出して、またため息が出た。

「どうしたの?京子ちゃん。具合でも悪いの?」

心配そうにスタッフの方に声をかけられた。

「……いえ、なんでもありません」

笑って告げたのに、その人は放っておいてくれなかった。

「さっきから何度もため息ついてたから気になったんだけど、何か心配事?俺でよかったら相談にのるよ?」

心配されても、自己嫌悪に陥ってるだけなのに……

「ホントに大丈夫ですから」

放っておいて欲しかった。

「話せばすっきりするよ?人がいないほうが話しやすいなら移動する?」

なんて言われて困惑してしまった。

「そこで何をしてるの?」

衣装を着替えに行っていた敦賀さんが戻ってきて、スタッフの人を厳しい目で見つめていた。

敦賀さん、怒ってる?

「いえ、あの、キョーコちゃんが悩んでるみたいなので、相談にの」

「キョーコ、何か悩んでるの?」

敦賀さんは、スタッフの人の話を遮って、大げさなぐらい心配そうに私の顔を覗き込んでいた。

なんでもないと告げたかったのに、言葉を飲み込んでしまった。

「キョーコの悩みは俺が聞くからもういいよ。心配してくれてありがとう」

敦賀さんはそんなことをシレっとスタッフの人に告げて、追い払ってしまった。

「『お父さん』の俺に言えない悩みなんてないよね?」

敦賀さんがどこか楽しそうに見えるのは、私の気のせいかしら?

周りから敦賀さんは『娘』を心配する『お父さん』になりきってると、笑いながらささやかれてる声が漏れて聞こえてきた。

えぇ、敦賀さんの『お父さん』は完璧ですよ。

それに私の『娘』がついていけないのが申し訳なくて……

知らず知らずまたため息をついていた。

「具合でも悪いの?」

心配そうに敦賀さんが顔を覗き込んできて、違うと首を横に振った。

「『お父さん』との差が浮き彫りになって、落ち込んでるだけです」

仏頂面で告げたら、吹き出されて、頭をぐりぐりとなでられて、髪がぐちゃぐちゃになってしまった。

「何するんですか~!」

つい、敦賀さんに怒鳴ってしまった。

そのせいで、周囲の笑い声が大きくなった。





敦賀さんの撮影が終わってから、どこかで食事を食べて帰ろうという話になった。

さすがに、いつかのようにファミレスというわけにはいかないだろうけど、どこか適当なお手頃のお店だと思ったのに、連れて行かれたところはホテルだった。

「こんな高そうなところ……」

入るのをしり込みしてたら、そっと背中を押された。

敦賀さんは大丈夫だよって感じに優しく笑いかけてくれて、エスコートされるままに、足を踏み入れた。

レストランでの食事かと思っていたら、ホテルの一室で二人きりのディナーで、人目を気にせずに食事をすることが出来た。

フルコースなんて初めてで、ちょっと緊張してしまったけど、目の前には優しく微笑んでくれる敦賀さんがいて、嬉しくなった。

「こんな素敵なところに連れてきてくれてありがとう。無駄遣いさせてごめんなさい」

食事を終えてエレベーターに乗る前に敦賀さんにそう告げたら、心配しなくていいとばかりに頭をポンポンと軽く叩いて優しく微笑まれた。

「キョーコが幸せそうに食べてくれたからよかったよ」

その一言が嬉しくてニッコリ笑いかけた。

ロビーで待ってるように言われて、大人しく隅で待っていると、ぐいっと肩を掴まれた。

びっくりして振り返ったら、そこにはショータローが立っていた。

いい気持ちだったのに、どうしてこんなところでこんな顔を見ないといけないのか。

せっかくの気分が台無しになった。

「お前こんなことろで何してんだよ」

「なんだっていいじゃない。あんたには関係ないでしょ」

ショータローの手を振りほどいて睨みつけた。

「お前一人ってことはないよな?まさかあの野郎と一緒なのか?」

不意に出てきた手が、私の視界を遮った。

思わず後ずさったら、誰かにぶつかってしまった。

「キョーコ?女の子なんだから、眉間にしわ寄せて怖い顔しないの」

すぐ後ろから聞こえる声の主が敦賀さんなのは、振り向かなくてもわかった。

だから私の視界を遮っている手も、敦賀さんのものなんだろうなと思った。

怒ってるような口調には感じられなかったけど、ショータローと聞くと不機嫌になる敦賀さんがどんな顔をしているのかわからなくて、怖くて振り向くことも出来ずに硬直してしまった。

ゆるく後ろから抱き締められて、耳元にかかった息がくすぐったかった。

「キョーコ、わかった?」

耳元で囁かれて、言葉を発することが出来なくて、コクコクと頷いた。

「『キョーコ』だと?いつからそんな気安く呼び捨てするような仲になったんだ?敦賀さんよ」

ショータローがすごんで見せても、敦賀さんは全く動じてなかった。

「つい最近かな?ね、キョーコ」

同意を求められて、頷いた。

「なん…だと?キョーコはお前のものだとでもいうのかよ」

「君は場所柄を考えて発言する方がいいよ?」

さっきからショータローが大声を上げているので、何事かと注目を集めていた。

敦賀さんが私の肩を抱いて歩き出したので、恥ずかしくて、赤くなっているだろう顔を隠したくて、敦賀さんの胸に甘えるように顔を寄せた。

そのままショータローを顧みることなく、ホテルを後にした。





「ごめんなさい」

帰りの車の中で、敦賀さんに謝った。

「どうしてキョーコが謝るの?」

「だって、せっかく素敵なところに連れて行ってもらったのに、あの馬鹿のせいで、素敵な気分が台無しになって」

しょんぼりしてる私とは対照的に、敦賀さんは楽しそうに笑っていた。

「別に不破を呼び出したわけじゃないだろ?」

敦賀さんの言う通りで、次の言葉が出なかった。

「キョーコ?男性に付きまとわれて困ってたらいつでも追い払ってあげるからちゃんと話してね?」

当然のように告げられて、『お父さん』って大変だなぁと思った。


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2010.02.25 / Top↑
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