こちらはスキップビートの二次創作ブログです。 原作者様及び出版社様等とは全く関係がございません。

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4-1

おうちに帰ろう~Sweet home~


「え? 敦賀さん、おでんを食べたことないんですか?」

その事実が判明したのは、B級グルメの特集番組を一緒にみていた時。
番組で紹介されたおでんを見て、「これって煮物みたいなもの?」と訊ねたから。

「家では洋食が多かったから」とちょっぴりバツの悪そうな顔。
おでんも鍋も食べた事がないという敦賀さんは、やっぱり英語圏で暮らしていたのかもしれないな。

「おでんは冬に食べることが多いですけど、最近は夏おでんもあるんですよ。ただ‘冷たいおでん’ってだけじゃなくてだし汁がゼリー状になってたり具もトマトとか‥変わったものが入ってたりするんです」
「へぇー」

「でも私は温かいおでんのほうが好きです。だるま屋でも人気のメニューなんですよ。大将が作るおでんは関東風ですね。関西では“関東煮”っていうんですけど」
「なにが違うの?」

「関東風はじっくり味を染み込ませた醤油味です。関西風は昆布出汁の淡い味ですね。具にも違いがあるみたいです」
「美味しそうだね、食べてみたいな。今度いっし」

「いいですよ!作ります。アツアツのおでんを食べながら冷酒で一杯が美味しいって大将が言ってました!敦賀さん、今度お仕事が早く終わる日はいつですか?」


***


「お疲れ様でした。お先に失礼します」

きまぐれロックの収録後、光さん達に挨拶を済ませ、廊下を歩きながら時計を確認する。

「よかった。間に合いそう」

今夜は、約束のおでんの日。

大根などの具はしっかり味をしみ込ませるために、朝から準備しておいた。
日本酒だってカップと一緒に冷やしてある。
あとは4時から特売される鰯で、大将直伝のツミレを作ればおでんは完成だ。

スムーズに進んだ収録のおかげで、タイムサービスが始まるまでにはまだ余裕がある。
カバンから広告を取り出して、もう一度本日の特売品をチェックした。

あ、卵!お豆腐も安い。
明日の朝は、敦賀さんの好きなほんのり甘い出汁巻き玉子とお豆腐の味噌汁と───。

広告に夢中になっていた私は、前方に対する意識が散漫になっていて、行く手を塞ぐように立ちはだかる人影に気付かなかった。

「いたた…。ごめんな───あっ!」
「……よう」

おもいっきりぶつけた鼻を押さえながら見上げれば、そこにいたのは憎きショータロー。
───のはずなのに、なぜか心は穏やかで怨キョも顔を現さない。


「フン。スーパーのちらしチェックかよ。あいかわらず貧乏くせーな」

ぶつかった拍子にハラリと落ちた広告を拾い上げたショータローが、嘲るように鼻で笑う。

「なっ!」
「顔が売れてねぇヤツは普通に買い物できるんだな。羨ましいぜ」

くっ!
悔しいけど反論できない。
確かに私は、街を歩いていても誰にも気付かれないもの。

でも、気付かれないからこそ出来ることもある。

「ふん! そうね。誰かさんと違ってぷっちん☆プリンだって気兼ねなく買えるわ。あ、そういえばそこのコンビニに幻のBIGサイズが売ってたわね」
「なにっ?」

「かっこつけの誰かさんには欲しくても買えない代物でしょうけど」

「……買ってこいよ?」
「はぁ? 欲しけりゃ自分で買いに行きなさいよ。なんで私があんたのお使いしてあげなきゃいけないのよ」

「……なんだよ、ずいぶん冷てーじゃねーか。ハジメテの相手に向かってよ」
「はぁ? なによ、それ?」

「ファーストキスの相手はお前の王子様なんだろ?」
「ファー…!! ち、違うもん!!」

ショータローの言葉に反応して全身が、かぁ~と熱くなっていく。

「なにが違うんだよ。お前、初め」
「わざとじゃないもん!! しようと思ってした訳じゃないんだから!」

「わざとじゃなくても初めてなんだから」
「あれは本当に偶然なの!! だって振り向くと思わなかったんだもん!!」

「はぁ? お前何言って───?」

やだっ!
忘れて───なんかいないけど、というか忘れられるはずもないけど。
敦賀さんもアノ事には触れてこないし、思い出さない様にしてたのにっっ!!

あの日の事が。
唇の感触が。
驚いた敦賀さんの顔が───鮮明に思い出される。

あれはお礼なの! 深い意味はないの!!

‥‥‥お礼‥‥?


───ありがとう───


「っつ!!」

やっ、やだっ!!
なんで、なんであの頬へのキスの事まで思い出すの!

顔が、身体が熱い……。
心臓が爆発しそうなほど早鐘を打つ。

意識が、あのヒトに囚われていく。


「おい! キョーコ!!」
「?!」

掴まれた腕を引き寄せられて、吐息が触れそうなくらい近い距離、今まで見たことない様な真剣な眼差しで射抜かれる。

なに───?

「お前───」
「あ! やだ、もうこんな時間!」

思わず逸らした視線が捉えたものは、ショータローの腕にはまる高級そうな時計。
その針は、タイムサービス開始10分前を示している。

「大将のツミレがっ! 買えなかったらあんたのせいだからねっ!」

掴まれた腕を振りほどき全速で駆けだした。


「キョーコっ!! 待てよ!!」


ショータローが何かわめいていたけれど、気にしてなんかいられない。
だって今日は敦賀さんと一緒に、特製のおでんを食べるんだから。


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2010.10.05 / Top↑
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