こちらはスキップビートの二次創作ブログです。 原作者様及び出版社様等とは全く関係がございません。

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4-2


おうちに帰ろう~Sweet home~


「はい、敦賀さん。お仕事お疲れ様でした」
「ありがとう」

ほかほか湯気が立ち上る土鍋から自慢のツミレとしっかり味のしみ込んだ大根を取り分けて手渡し、
瑠璃色の、菊文様の切子のグラスに冷酒を注ぐ。

「うん。美味しい」
「でしょう! これ大将の自慢の一品なんですから!」

ふーと息を吹きかけてあつあつの大根を冷ます敦賀さん。
その薄く形のいい唇を思わず凝視してしまう。
もう、ショータローが思い出させるから意識しちゃうじゃない。

つんと突き出したソレは、まるでキスを強請っている様にみえて。
自分の唇を、そっと指の背で触れてみる。

違う───。
何と言うか…、こうもっと柔らかくてあたたかくて……。

「ん?」

不意にこちらを向かれ、慌てて逸らした視線。
なんだかイケナイコトを見られたような気がして唇にあてていた指を隠すように背に回した。

「いえなんでも───あっ!!」

大きく振り払うように動かしたその手が、テーブルの上のカップにあたる。
グラリと傾いたカップは宙を舞い、大きな音を立てて砕け散った。

「ごめんなさい、カップが!」
「ああ、そんなの気にしなくていいから。それより危ないよ。今、掃除機を持ってくるから」
「───痛っ!」

一瞬の痛みの後、小さな傷口から深紅の血がにじみ出す。
あー。やっちゃった。

「切った? みせて」
「大丈夫です、ちょっと切れただけですから。こんなの舐めておけば治りますから──────へっ?」

掴まれた指先に感じる生温かいナニか。
ちょ、ちょっと待ってぇっっ!!!

「ぎ、ぎゃ───。ナニするんですかっ!?」

慌ててその手を引いたけれど、がっちりと握られた腕はビクともしない。

「ナニって…。舐めたら早く治るんだろう?」
「それは大したことないって意味です! 舐めても治りません!」

「そう? でも動物は傷を舐めるし…案外、治りが早くなるのかもしれないよ?」
「ひゃんっ!!」

指先を咥内に含まれテロテロと舐められる感触に一気に頬が熱くなる。
ソコから生まれた熱が身体中に広がって、ジンジンと疼きだす。

なに……、これ?

「はい、消毒おしまい」
「ふぇ?」

オカシな感覚に気を取られているうちにいつの間にか指に貼られているバンソコウ。
一体どこから取り出して───いや! そんなことよりっ!!

「もう!! 敦賀さん、セクハラですよっ! こんなこと、誰かれ構わずしてたら誤解されちゃうんだからっ」
「セクハラって…ひどいな、早く治る様におまじないの意味も込めたのに。それに誰にでもする訳じゃないから大丈夫だよ」
「誰にするんですかっ! こんな破廉恥な事!」
「ん? 最上さんくらいかな。ほら、早く食べないと折角のあつあつおでんが覚めちゃうよ」

私くらいって───。
確かに敦賀さんがイヂワルするのは私くらいだけどさっ。
だけどこんなイヂワル‥心臓に悪すぎる。

「おかわりくれる?」
「へっ? あ、はい」

差し出されたお皿を受け取って今度はさっきと違う具を見繕う。

たまごでしょ、さつま揚げ、はんぺん‥。
あ、そうだ。

「敦賀さん。これね、4種類あるんですけどどれがいいですか?」
「ん?」
「巾着って言うんですけど中身が全部違うんです」

それは、油揚げの中にお餅や鳥団子などを入れて干瓢で縛ったもの。
それぞれ違った具を入れてちょっと遊んでみたんだ。

「へー。じゃあコレにしようかな? なにが入ってるのか楽しみだね」


「あれ? 最上さんこれ何も入ってないよ?」
「ふふ、それはハズレです。1つだけ何もいれなかったんです」

「ハズレもあるのか……。ロシアンルーレットみたいだな」
「ハズレを引いた敦賀さんは罰ゲームですよ。後片付けをお願いしますね」

「仕方ないな……。ところで、最上さんのそれは何?」
「これはモチ巾着です。私、これが一番好きなんです───、あ~~っ!!」

私のお皿からお餅の入った巾着を奪い、パクリと一口でほおばる。

「うん、ホントだ。美味しいね」
「美味しいね、じゃないですよ! それ私のですっ!」
「代わりにコレ、あげるよ」
「これ、ハズレ巾着じゃないいですかっ!」
「最上さんもハズレだから、後片付けは一緒にしようね」

「敦賀さん、ずるいっ!」
「ずるくありません」

ツンとそっぽを向く敦賀さんと。
ムーっと頬を膨らませる私。

なんだか子供みたいな言いあいがおかしくて
二人、顔を見合わせて笑った。


幼いころから‥、母と一緒に食事をした記憶はほとんどない。
いつも用意された食事を一人ぼっちで食べていた。
ショーの家に預けられていた時だって、旅館の仕事で忙しい女将さんや板長と食事をしたのは数えるほど。
東京に出てきてからはバイトバイトでゆっくりご飯を食べる時間もなかった。

敦賀さんと囲む食卓は、いつも笑顔と会話が絶えなくて。
私をあたたかい、幸せな気持ちにさせてくれる。

一緒にふざけあいながら、

剥れて
笑って

拗ねて
笑って

呆れて
笑って

それは、ずっと憧れていた幸せな家庭。


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2010.11.03 / Top↑
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