こちらはスキップビートの二次創作ブログです。 原作者様及び出版社様等とは全く関係がございません。

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6-3

*

カットの声とともに、握られた手を振りほどき、口づけを受けた手の甲を海水で洗う。
そんな彼女をみて喚く不破。

「またやってるよ」
「本当に仲がいいな、あの二人」

聞こえてくるスタッフの声に、誰にも気付かれないよう小さくため息を吐いた。



おうちに帰ろう~Sweet home~



「はい、OKです」

撮ったばかりの画をみつめる真剣な表情が、その一言で柔らかな笑顔に変わる。

「お疲れ様、最上さん。これ飲んで?」
「ありがとうございます。わ、あったかい」

手渡したホットミルクティのボトルを両手で包み込むように持ち、頬に寄せると、
「……あったかい‥…」
小さく呟き、その温もりにホッとしたように瞳を閉じた。

濡れたままの衣装が体温を奪うのだろう。
何気ない風を装ってはいるが、足や手が小刻みに震えているのがわかる。

「最上さん、着が」
「京子ちゃん。お疲れ様」

───着替えておいで?
その言葉は、同時に声をかけたプロデューサーの声でかき消された。

「麻生さん! お疲れ様です」
「とっても素敵な“人魚姫”だったわ」
「あ、ありがとうございます」
「これで撮影は終了になるけれど、この後、尚やスタッフ達と打ち上げを兼ねた食事をって思ってるの。京子ちゃんもいらっしゃいよ。 敦賀君達も一緒に。ね?」
「あ……、えっと───、」

ちらり。
最上さんが、少し困ったような顔で俺を窺い見る。

「お誘いは嬉しいのですが、俺達はこれから寄るところがありますので……お先に失礼させて頂きます」

俺たちという言葉を「俺と社さん」という意味に取られないように。
羽織ってたジャケットを脱ぎ彼女の肩にかけると、そのままぐいっと引き寄せた。

「あら、そうなの? 残念ね」
「申し訳ありません」

「敦賀さん、これ…濡れちゃいます」
「いいから着てて? それより早く着替えて」

「へぇ~。敦賀蓮ともあろうお方が、事務所の後輩のアシ代わりをねぇ。よっぽど暇なんだな」

いつの間にか衣装を着替えていた不破が、金色に染めた髪を軽くかきあげながら不遜な眼差しを向ける。相変わらずな態度に思わず苦笑が零れた。

「確かにこの後、仕事は入っていないけどね。暇なわけではないよ?」
「フン」

「ちょっと、ショータロー!! あんた、敦賀さんに向かってなんて失礼な口、聞いてるのよ!!」

「敦賀さん、すみません。このバカショーが……」
「うっせーな。なんだよ、バカって」
「バカだからバカって言ったのよっ! 敦賀さんは芸能界の大先輩なんだからもっと敬いなさいよっ!」
「なに言ってんだっ! その大先輩をアシに使ってるのはどこのどいつだよっ」
「そんな恐れ多い事してないわよっ!!」
「現にこいつはここにいるだろうがっ!」

再び目の前で繰り広げ始めた光景、面白くないとばかりに二人の間に割入り、彼女の肩に手を置いてその身体をくるりと反転させた。

「ほらほら、最上さん? いつまでも濡れたままはよくないよ。早く着替えておいで?」
「はい。あの……すぐ戻りますから、待っていてくださいね」
「急がなくていいから。ちゃんと体を温めてくるんだよ?」

申し訳なさそうに何度も頭を下げ、着替えのためにバスへと向かって走る最上さんの後姿を見つめる。
あの様子じゃ、きっと暖も取らずに戻ってくるな……

「へっ! あいつが風邪なんかひくタマかよ。 昔っから元気だけが取り柄なんだからな、キョーコは」
「───彼女の事……、よくわかってるんだね?」
「ったりめーだろ。俺はな、昨日今日知り合ったような誰かさんとは違うんだよ。あいつの事は誰よりも知ってるし、あいつも俺の事を誰よりも理解(わか)ってるんだ」

ニヤリと勝ち誇ったような笑みを浮かべて、俺を見据える。
───確かに、彼女と過した時間は不破に劣る。だけど……、

「──────本当に……そうかな?」
「は? どういう意味だよ?」

「………………」
「おい!」

───彼女を想う気持ちは……

「お待たせしました」
「ちゃんと暖まってきた?」
「はい。お茶も頂きましたし、大丈夫です」
「ほらな」

「ちょっとショータロー、あんたまた敦賀さんに絡んでたわね?」
「ショータロー言うな! それに絡んでねぇ、こいつが───」

「───最上さん?」
「はい?」

「……お疲れ様。よく頑張ったね。もう我慢しなくていいんだよ?」
「───えっ?」

見上げる瞳が不安げに揺れる。

「───ん?」

ニコリと微笑めば、彼女はそのままコツンと俺の胸に凭れるよう頭を寄せた。

「なっ! キョーコ、お前、なにして───」
「───どうして……。

……どうして敦賀さんにはわかっちゃうんだろう? 悔しいな。ちゃんと演技出来ていたと思ったのに……」

「大丈夫。ちゃんといつも通り“女優・京子”を演じていたよ。勿論“最上キョーコ”もね」
「……本当ですか? よかった……」

張りつめていた緊張が取れたのだろう。ガクンと足の力が抜け崩れ落ちる彼女を支え、そのまま抱き上げた。

「おい……キョーコ……」

「社さん、病院の予約を取ってもらえますか? 風邪だと思うんですが……。彼女、熱があるんです」


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2011.05.01 / Top↑
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