こちらはスキップビートの二次創作ブログです。 原作者様及び出版社様等とは全く関係がございません。

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6-5

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「美味しい……」

からっからに渇いた喉を冷たい感触が通り過ぎ、体中に染みわたっていく。
程良い甘さと冷たさが火照った身体に心地良い。

「社さんが風邪をひいた時にはこれがいいって教えてくれたんだ。熱が出ると脱水状態になりやすいみたいだから水分はちゃんと摂らないとね。もう一杯、飲む?」

その言葉にコクンと頷き、空になったグラスを渡す。
トクトクトク。
少し濁った液体が、グラスに注がれていくのを見つめた。

「昔……、俺が風邪をひいた時に君が作ってくれたスタミナドリンク。アレは殺人的に不味かったな」

まるで今、あのドロドロとした色のジュースを飲みほしたかのように。
はぁーっと、大きなため息を吐いて力なく項垂れる敦賀さんに慌てて弁解をする。

「だって、あれは! ……別にイヂワルで不味くしたとかじゃないですよ?」

ちらりと視線だけをあげて覗けば、

「分かってるよ」

優しくほほ笑みながら、汗で張り付いた髪をそっと梳いてくれる。
その笑顔は眩しくて。

……なんだか、恥ずかしい……。

不意に胸が苦しくなって、その視線から逃れるように手の中のグラスに視線を落とした。

「アレを飲んだおかげで元気になったからね。 最上さんにも作ってあげようか? 見よう見真似だけど」
「……遠慮します」

指先が触れた額が熱いのも。
いつもより鼓動が速いのも。

全部、全部───、
風邪のせい…………。



おうちに帰ろう~Sweet home~



「だいぶ元気になったみたいだね。 食事、とれそう? おかゆを作ったから食べられるようなら持ってくるよ?」
「敦賀さんが作ったんですか?」
「割とうまく出来たと思うよ?」


一人用の小さな土鍋の蓋を開けると、湯気と共に美味しそうな匂いが立ちこめる。

「ありがとうございます」

よそってくれた茶碗をうけとろうと伸ばした手───は、そのまま空を切った。

「?」
「はい。あ~ん」
「えっ?!」

ふ~~っと軽く息をかけ、当然の様に差し出されたレンゲ。
ちょ、ちょっと待って~~っ!!!

「じっ、自分で食べれます!」

あわててレンゲと茶碗を奪おうとしたけれど、当然阻止されて。

「病人は大人しくしてなさい。はい、あ~んして?」

再び口元に運ばれる。

ニコニコとなんだか楽しそうな笑顔。
どうやら拒否権は存在しないらしい。

「───つっ───」

恥ずかしくて余計、熱があがっちゃいそうだったけど
パクリと差し出されたソレを口にした。


「……美味しい……」
「ホント? 良かった」

ネギとショウガ、とろとろの卵が入った中華風のおかゆ。
ご飯もちょうど良い柔らかさで、とっても美味しい。

「隠し味は愛情かな?」
「ふふ、それは高級なスパイスですね」

子供の頃。
熱を出して寝込んだ時も母親は平気で家を開けた。
苦しくて、心細くて。
一人残された部屋で泣いたのを覚えている。

ショータローの家にお世話になってからだって、兎に角迷惑をかけない様に……それだけを考えて。
女将さんに言われた通り、どんなに具合が悪くたってそれを表に出さない様に心がけた。
誰にも気付かれず1日を終えて、部屋に戻るなり倒れこんだことだってある。


そっか……。
看病してくれたのって、敦賀さんがはじめてなんだ───。


「薬を飲んだら、少し休んだ方がいいよ」

かちゃかちゃと、食べ終わった食器とグラスをトレーに乗せて立ち上がる。

「あ…………」
「───ん?」

どうしてだろう。
部屋を出ていこうとする敦賀さんの後ろ姿を見たらなんだかとても心細くなった。

「えっと……、その………」

いいよね。
もう少しだけ、敦賀さんの優しさに甘えても……。

「……も、もう少しだけ……、一緒に居てもらってもいいですか?」

そぉっと掛け布団を引き上げ、目だけを出して窺うように見つめた。

「いいよ。───寝るまでここに居るから。安心してお休み?」


頭を撫でる大きなやさしい手は、とても心地よくて。
一人じゃないと安心できて。
あたたかい気持ちになる。



「───?───」


───薄れゆく意識の中で、額に感じたなにか柔らかい感触。

それはまるで悪しきものを打ち消す魔法の様に、ゆっくりと体内に浸透していって。
幸せな気分で眠りに落ちた。


→ NEXT happening



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2011.05.29 / Top↑
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