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2010年 惣也様主催「SKBアンソロ計画 Give me the fairy's LOVE」に参加させて頂いた作品です。



*** 6 ***


「最初に言っておくけど、俺は君と別れるつもりはないから」
「なっ!」

大人しく車に乗ってはくれたものの、彼女は一言も口を利かず、ただずっと窓の外を流れる景色を見つめていた。
重い沈黙を破って伝えた言葉に、彼女がこちらを振り返る。ようやく見せてくれた顔は少し怯えたような、でも泣いている様なそんな表情。
運転をしながらではなくきちんと目を見て話をしようと人通りの少ない道へと車を進め、近くにあった公園の前に車を止めた。
フロントから差し込む微かな月明かりが、ぼんやりと二人を照らす。

「君がもう俺なんか好きじゃないって言ったって、絶対に別れてあげない」
「なんで……、何故ですか? 同情なんていりません!」
「同情じゃないよ。俺は君が好きだから別れたくない、それだけだ」
「嘘!」
「嘘じゃないよ。俺は君を愛している」
「だって……、だって敦賀さんには」
「あの記事の事を言っているなら、あれはガセだから。彼女はただの共演者、それ以上でも以下でもないよ」
「だったら! あの日、どこにいたんですか? 仕事だなんて嘘をついて! 私、ずっと待っていたのに。敦賀さん、帰ってこなかったっ!」
「ごめん……、一人で考えたい事があって」

あの日――――――――
最上さんの誘いを断腸の思いで断った俺は、まっすぐに帰る気がせずに行くあてもないまま車を走らせていた。深夜、帰宅して最上さんが家に来てくれていた事を知った時は後悔したんだ。
まっすぐ帰ってくれば良かった、と。

「私、お休みの日を一緒に過ごしたかったのに! ずっとずっと一緒にいたかったのにっ!!」
「俺だって一緒にいたかったよ。だけど――――」
「さよならって手紙も書いたのに……」
「あの手紙、そう言う意味だったの? 俺……、ただの挨拶だと――――」


『お疲れ様です。食事作りましたのでよかったら召し上がってください。勝手にお部屋に入ってすみませんでした。
さようなら。 キョーコ』


あの文章が別れの手紙だと思う人がいるのだろうか。
いや、それよりも……。
最上さんからの手紙が嬉しくて大事に手帳に挟んで持ち歩いていたのに……。それが〝別れの手紙〟だったなんて。

「鍵だって返したのに、敦賀さん、連絡くれなかった!」
「しようと思ったよ。だけどもう二時を回っていて……、寝ていると思ったんだ」
「そうだ、最上さんが作ってくれた食事、もうなくなってしまったんだ。また作りに来てくれないかな? 今度は、一緒に」
―――― 一緒に作って、君と二人で食べたいな?
 そう言おうとした俺の言葉は、彼女のヒステリックな響きを含む声に遮られた。 

「一緒にいたって! いつも楽しくなさそうな無表情(かお)するし、だ、抱きしめてくれなくなったし、おやすみのキスだってしてくれな……ぃ……」

ボロボロと大粒の涙が、彼女の瞳から零れだす。
遠慮ばかりでなかなか甘えてくれなかった彼女が初めてむき出しにした感情。
あぁ。こんなにも

――――君が愛しい。

華奢な身体が軋みそうなほど強く胸に抱きしめた。

「ごめん……。こうやって抱きしめたらいつか嫌がる君を無理やり穢してしまいそうで……、嫌われるのが怖くて……距離を置いていた」
「けがす?」
「俺は……、君が思っているほど紳士じゃないからね。ずっと思っていた──、君を〝抱きたい〟って」
「……抱きたい……?」
「抱きしめたいじゃないよ? 抱きたい。つまり君とエッチしたいって事」
「エッ?!」

ボフン! と音が聞こえてきそうな程、彼女の全身が真っ赤に染まる。慌てて腕の中から逃げ出して俺と距離をとるように窓にべったりと張り付く、そんな彼女に思わず苦笑い。

「軽蔑した?」

初めは一緒にいられるだけで嬉しかった。彼女が俺の事を好きだと言ってくれた、それだけで幸せだったから。
だけど、いつしか心に生まれた邪な感情

――――抱きたい――――

その想いは、彼女に触れる度にどんどん膨らんで、心を蝕んでいく。天然乙女な彼女は、とにかく初心で、額にキスをしただけで真っ赤になる。甘い雰囲気に口づけようと見つめれば途端に硬直する身体。ようやく交わした初めてのキスも本当に軽く触れるだけのモノ。
彼女は恋愛初心者なのだ。焦ってはいけない、怖がらせてはいけない、ゆっくり進んでいけばいい。そう自身に言い聞かせる日々。だけど根付いてしまった感情はどんどん大きくなって、脆い理性は崩壊寸前。
彼女を失わない為に、嫌われない為に、紳士な俺でいる為に、少しだけ距離を置いた。それが彼女を傷つけ不安にさせる事になるとは思いもせずに――――


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2012.10.24 / Top↑
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