こちらはスキップビートの二次創作ブログです。 原作者様及び出版社様等とは全く関係がございません。

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例え、私を覚えていなくても、
あなたが隣にいてくれるなら‥

Act.4

「今日はお弁当を作ってきました」

ピンクのランチクロスに包んだお弁当を差し出した途端、彼の眼が泳ぐ。

「あー、嬉しいけど俺は病院で食事がでるし…さっき昼も食べたばかりだから…」

ごめんね、でもありがとう。
なんて、紳士な顔して笑ったって私は誤魔化されませんからね。

「ウソですね」
「え?」
「ちゃ~んとネタは上がっているんです!敦賀さん入院してからいつもお食事残しているでしょう?」

入院してからの行動を事細やかに記入した、‘マル秘・蓮メモ’(社さん情報)
手帳片手に、反論出来るものならしてみなさい!とばかりに踏ん反り返る。

「…君は、刑事か…」

あきれ顔で私を見る彼に、なんだか昔もこんな会話をしたなとおかしくなった。
それにしても、食事事情すっかりもとに戻っちゃたな。

「敦賀さん、日々の食事は大切なんですよ。体を鍛えるだけじゃだめなんです。プロなんだから――」
「わかった、わかった」

くどくどお説教を始めた私に苦笑いしながらも、観念してお弁当を受け取った。

「ちゃんと敦賀さんにあわせて量も少なめにしてあるし、好きなものばっかりにしたんですから全部食べてくださいね」

こぽこぽと携帯用ポットから持参した味噌汁を注ぐ。
はぁ~とため息をつきながらお弁当箱をあける彼を、頬杖ついて見つめた。

ほんのり甘い出汁巻き玉子は、大将直伝の自信作。
たらこ入りのポテトサラダに添えたトマトは、バルコニーで育てたプチトマト。
ハートと星の形にくり抜いたニンジンのグラッセとブロッコリー。
そして、

「これも俺の好物?」

最初に箸に取ったのは、ハンバーグ。

「ふふ。それは私の好物です」
「君の好物なら君が食べた方がいいんじゃないか?」

ハンバーグを私の眼の前に差し出すから、躊躇もせずパクリと口に入れた。

「‥っ‥」

所謂、「あ~ん」
彼は多分冗談のつもりだったのだろう。びっくりしたように目を見開いている。

それは、食事を作る私の隣で味見をせがむ彼によくしていた事。
でも彼が私にした事はない。
だって恥ずかしいもの。だから今日は特別ですよ。

「敦賀さんの好物、カエルの姿焼は入っていません。私、触るのイヤだもの」
「…好きじゃないよ、俺だって」
「嘘!自分で食べようって言ったくせに!」
「言わないよ、そんなこと」
「言いました!」
「言っていません!!」

お互い譲らない攻防。
ブーっと口を尖らせると、突然敦賀さんが噴き出した。

「ぷっ。くくくっ。なんだか子供の喧嘩みたいだな。どうも君には調子を狂わせられる。いつもの俺じゃないみたいだ」

彼の言う『いつもの俺』とは、きっと『敦賀蓮』の仮面をかぶった久遠ではない彼。

 『君の前では俺はクオンだからね。紳士な敦賀蓮はいません』

私の事を忘れていても、かわらず私だけにみせてくれる本当の姿が嬉しかった。

「ごちそうさま。美味しかったよ」

空になったお弁当箱を受け取り、にっこりほほ笑む。

「本当ですか?それじゃあ、また作ってきますね」
「え?」
「それが嫌ならしっかり病院のお食事食べてください。ちゃんと栄養のバランスを考えた食事なんですから」
「いや、そうじゃなくて… 食べないとまた君にお説教されるんだろ?だったら味気ない病院食より君が作ってくれるお弁当の方が美味しいし嬉しいけど…。君だって仕事があるんだから無理だろうと思ってね」

びっくりした。
私の事を覚えていない敦賀さんが、こんな事をいうなんて。
あれは付き合い出してすぐのこと。

***

「蓮の奴、相変わらず少ししかご飯食べないんだよ。あんな大きい体なのに不思議だよね」

社さんが呆れたように言った言葉。
敦賀さんの食生活は、本当にぞんざい且つ大雑把だ。
1日の食事が、ナントカゼリーだったりおにぎりだったり。
仕事で一緒にいるときは無理やり食べさせたりしていたけれど、やっぱりこれからは私がなんとかしなくっちゃ!だって私は、こ…こっ…恋人なんだからっ!

「敦賀さん!今日おうちで待っていてもいいですかっ?」

その日、敦賀さんの仕事は8時には終わる予定だった。だけど撮影が延びて結局帰って来たのは11時過ぎ。お昼からまったく食事を取っていないと平然と言う彼に驚いた。

「敦賀さん、ちゃんと食事してって言ったじゃないですか!どうしてそんな不健康な事を…」
「だって君が食事を作りに来てくれるって言っていただろ。仕出しの冷めた弁当よりキョーコが作ってくれる温かくて美味しいご飯が食べたかったから」

その理由は正直、嬉しかった。
だけどそれにしたって、半日近く食べないなんて…。
本当この人の体、どんな仕組みになっているのかしら?

「じゃあ、お弁当作ったらちゃんと毎日食べてくれますか?」
「君が作ってくれるなら嬉しいし勿論残さず食べるけど…。君だって仕事も学校もあるんだから無理だろう?」

確かにいつも同じ場所で仕事をしている訳じゃないから、毎日お届けするのは難しい。だけど敦賀さんの体も心配だし。それに‥‥。
好きな人が、美味しそうにお弁当を食べてくれる。
その姿を思い浮かべて料理をするのは楽しいから。

おいしくな~れ。
唱える魔法の呪文。

美味しいって言ってくれるかな?
残さず食べてくれるかな?

今日も彼の笑顔が見られますように。

***

「じゃあ、忙しくない時だけ。だって敦賀さんの事心配だもん。だからちゃんと毎日食事してくださいね」

あの日と同じ言葉を言ってみた。

「心がけるよ」

ちょっぴり苦笑い。
だけどその後はとびきりの笑顔で、あの日と同じ言葉を返してくれた。


きっと、もうすぐ私の事を思い出してくれる。
そう思った。


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2010.03.15 / Top↑
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