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京子 「やっぱきまぐれロック」生放送スペシャル出演。

この情報を公式サイトで見つけた時、チャンスだと思った。
彼女が出演する時間に俺もスタジオでドラマの収録があるが、その距離は眼と鼻の先。
収録前の仕事──。このスチール撮りを早く終わらせることができたなら、スタジオに向かう前にTBM本社に寄る時間ができる。

「敦賀くん、目線くれる~。OK、もう一枚!」

前髪を掻きあげ、視線で射抜くようにレンズの───その先の幻影を見つめた。

「ラスト───!!」


Act.16


声をかけてくる女性スタッフをかるくあしらい、向かったTBM
フロアを見渡せるその場所に身を隠し、行きかう人の流れを眼で追った。


「───しさ、京子ちゃんも、───」
「え~~、お好みアンパンですか~?」

周囲の喧騒がどこか遠くで聞こえる。
まるで俺と彼女だけが同じ空間にいるかの様に、彼女の声だけがはっきりと耳に届いた。

いた!やっと逢えた!

この数カ月探し求めた彼女が今、眼の前を通り過ぎていく。

───他の男と、肩を並べて。


あの男は見覚えがある。
確かLMEのタレント、……そう。ブリッジロックの石橋光。
今日彼女が出演するのは、あの男が司会進行を務める番組だったはず。

……随分と仲良さげじゃないか。
黒い感情が渦を巻いて立ち上がる。

「京子ちゃん?」

突然立ち止まった彼女が、何かを探すようにきょろきょろと辺りを見回し、そして勢いよく振り返った。
絡まり合う二人の視線。
大きく見開かれた瞳に浮かぶ、困惑の色。

思わずきつく掌を握る。
落ちつけ───、俺。

ニコリと紳士な笑顔を貼りつけ、歩み寄ろうと足を踏み出したその刹那、

「えっ?京子ちゃん?どこ行く───」
「すみませ~んっ!失礼しま~すっ!!」

脱兎のごとく逃げだした。

「!!!」

逃がすかっ!
慌ててその後を追いかけた。


「……っ……」

突然フラシュバックする映像。ぼんやり霞む景色の先に見える茶色い髪。
なんだ、今の……? 前にも同じ事が……あった?

「あっ!」

頭に浮かんだ映像と不思議な感覚に気を取られている隙に、ターゲットにトイレへと逃げ込まれてしまった。
流石に中に踏み込むわけにもいかず、その場から壁の向こう側の彼女に声をかける。


「……最上さん、話があるんだけど出てきてくれかな?」

「……できれば、きちんと顔を見て話したいんだけど、ダメかな?」

「……頼むよ……」


何を言っても、彼女からの反応は返ってこない。
やっぱり怒っているのだろうか‥。
───当たり前か‥。あんなにひどい言葉を投げつけたんだから。

大きくため息を吐く。

「‥わかった‥」

君が籠城するのなら、俺はこのままここで待たせて貰うよ?
まだ時間はあるのだから。
女子トイレのマークのついたその壁に、腕を組みもたれかかった。



「蓮、気持ちはわかるけど……、ここはまずいよ。人目があるし」

周囲の視線を気にしながら遠慮がちに話しかける社さんを、無言でギロリと睨みつける。

本当にわかるんですか? 俺の気持ちが!
記憶をなくして、彼女の事がわからなくなって。逢いたいと思っているのに誰も協力してくれなくて。
やっと見つけたんですよ? やっと会えたんです。
それなのに、顔をみるなり逃げられた俺の気持ちが本当にわかるんですか?


「そろそろ行かないと、時間が……。それにキョーコちゃんにだって仕事があるんだから…」

ちらり、時計に目をやる。
このまま粘っても、お互い仕事に遅れるだけ。しかも彼女は、‘生’の収録だ。遅刻させるわけにはいかない。
───タイムリミット‥か。


“敦賀さんの記録は私がまもって見せます!”


突然に頭に響く声。

「え?」

一瞬、彼女がそこからでてきたのだと思ったが、違う───。今のは、俺の記憶の中の声?


“絶対に間に合わせます!”


めまぐるしく動く景色。眼の前にはピンクのつなぎを着たショートカットの女の子。
はじめてクリアに見えた記憶のカケラ。

………君がまもってくれた記録を失うわけにはいかないな。


「わかりました。 ───もう行くから、出てきても大丈夫だよ。ゴメンね…」


何分もそこに閉じこもったままの彼女に声をかけ、その場を後にした。


***


「明日は午前中のドラマの撮りだけで、取材はキャンセルになったから午後からはオフな」
「え?」

キャンセル………?
珍しいな、でも有り難い。この時間を利用して彼女を探さなければ。
どこから探す?
ドラマのスタジオが確実か?
それとも───。

「そういえば、キョーコちゃんも明日はオフって言っていたな。またいつものようにマリアちゃんと事務所で雑用引き受けているんだろうなぁ」

紡がれた言葉に驚いてポカンと口を開けたまま、社さんを見据えた。

「なんだよ。今のは独り言だぞ!お前に言ったんじゃないからな!」

もしかして……、キャンセルって時間を作ってくれた、のか?

「……ありがとうございます……」
「俺は何も言ってない!」

いつも誰よりも俺の事を親身に考えてくれていた社さんを、裏切り者と思っていた自分を恥じた。


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2010.05.08 / Top↑
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