こちらはスキップビートの二次創作ブログです。 原作者様及び出版社様等とは全く関係がございません。

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クオン、って呼んで?
え…?

君だけは、俺をクオンって呼んで。
私、だけ…?
そう、君だけ。

…クオン……好き……。



Act. 20


あたたかい……。

心が落ち着く香りと優しい温もりに包まれて、目覚めた朝。
カーテン越しに感じる、やわらかな朝の陽ざし。

う…ん。 もう少しだけ……。

あまりの心地よさに、再び閉じかける思考。
もぞっと動いた私の頬に何か肌触りのよいものが触れた。無意識にそれをギュっと握りしめる。

ドクンドクンと聞こえる鼓動。
腰のあたりに感じるぬくもり、首の下の覚えのある感触。

ん?!

瞳を開くと眼の前には───。

「えっ?!」
「いてっ」

勢いよくあげた頭が、彼の顎を直撃する。
い、いたいっ。

「おはよう、キョーコ。強烈な起こし方だね」

「ごめんなさ───じゃなくて!!なんで一緒に寝てるんですか~っ!」

「ん?昨日帰ってきたら君がソファーで寝ていたから、風邪をひくといけないと思って運んだんだけど?」

なにも問題はないだろう?と言うように爽やかな笑顔で、「ここ、跳ねてるよ?」と私の髪を撫で付ける。

「起こして下さいよ!それか、私の部屋に運んでください!」
「レディの部屋に勝手にはいるなんて出来ないよ。それに───」

上体を起こした私は、彼に腕をひかれ再びその逞しい腕の中に閉じ込められた。
長い手足が私の身体に巻きつく。

「いつもこうして寝ていただろう?なんか抱きしめて寝たら安眠できたし」

「…抱き枕ですか、私は。それに!!呼び方、間違ってますっ!」
「間違ってないよ。いつもこうして寝ていたのを思い出したからキョーコって呼んだんだし」
「そんなの屁理屈ですっ!」

私の文句など、何処吹く風。
飄々とした態度で、ちゅっ、と音を立ておでこにキスを落とす。

「ね。キョーコは、いつクオンって呼んでくれるの?」
「え?」

「夢で見た君は俺の事“クオン”って呼んでいた。多分、二人の時はそう呼んでいたんだろう?」

確かにそうだけど…。なくした記憶を夢で見たってこと?

「なんの夢、みたんですか?」
「ん?」

耳元に顔を寄せ、ぼそりと囁くその言葉。

「んなっ!!!なんて夢みるんですかっ!破廉恥ですっ!!」

逃げるように部屋を飛び出せば、大笑いする彼の声が聞こえてくる。

悔し~いっ!またからかわれた~。

記憶をなくしても、敦賀さんはやっぱり敦賀さんだ。言う事もする事も全然変わらない。
二人の想い出を覚えていないのはやっぱり寂しいけれど、でも大丈夫。
敦賀さんが傍にいてくれるなら。


あなたを失わなくて───よかった。



***



12月中旬、映画の撮影がクランクインした。
お互いに全く知らされていなかったこの共演の話。これも社長の計画だったらしい。

私が彼を諦められない事も、彼が私といることを望むであろうことも全てお見通しで持ちかけられたあの賭け。
愛は障害がないと盛り上がらん、とわざとすれ違うように組まれたスケジュール。
そして、もしもの保険として期限ギリギリに用意された仕事。

本当に社長って……。



「結構、高いですね…」

崖から見下ろす海、その高さは優に5mはある気がする。
高いところが苦手なわけじゃないけれど、やっぱりちょっと怖いかも。

「ここは、地元の子供達が飛び降りて遊んでいるらしいよ。怖い?」
「怖いですよ!絶対に離さないで下さいよ?!」
「俺が君を離すはずないだろう?」


昭和初期。華族の一人娘である私、桜子は敵対する家の嫡子である彼、総一郎と出逢い恋に落ちる。
河原で逢瀬を重ねる二人。だけどその幸せは長くは続かなかった。
父親に気付かれてしまった桜子は、蔵に軟禁され家の繁栄のための政略結婚を強いられる。

姿を見せなくなった桜子をいつもの河原で待ち続ける総一郎。
蔵の中で一日中泣いて過ごす桜子を哀れに思った女中と庭番が、二人を逃がす手引きをする。

そして撮影は、逃亡中に追い詰められた二人が、離れ離れになる位ならと海へ身を投げるシーンから始まる。
本物思考の新開監督はスタントを使わない。
冬の海に何度も敦賀さんを沈ませる訳にはいかない。一度で終わらせたい。
パンパンと頬を叩き気合を入れ、“桜子”を憑ける。


追い詰められて向かった先は、自殺の名所と言われている断崖絶壁。
岩場を叩きつける荒い波。黒く深い海。(CG予定。本当は穏やかな海)
逃げ道はない。ならば二人、龍宮の海神の元へ───。

追手を振り払った総一郎と顔を見合わせ、抱き合って海に身を投げる。

───はずだった。

「きゃっ」

追手との激しい立ち回りシーンを演じる彼を崖端で固唾を見つめていた私。
その足場が突然崩れ落ち、身体が宙に放りだされる。

うそっ?!

「危ない!最上さん!!!」

落ちていく私に、差し出された掌。その手を掴もうと反射的に手を伸ばす。



───キョーコちゃん。
……コーン。



───最上さん。
……敦賀さん。



───キョーコ、愛してる。
……クオン!!



───君、だれ?



嫌だ。


忘れちゃ、嫌だ。


私を、忘れないで………。


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2010.05.24 / Top↑
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